3.食道がん 外科手術
食道がんの手術には、大きく分けて胸部食道がんの手術(食道亜全摘)と頸部食道がん(頸部食道切除)の2種類があります。
3-1胸部食道がんに対する手術
胸部にできた食道がんは首(頸部)から胸の中(胸部)、おなか(腹部)の広い範囲のリンパ節に転移を起こします。したがって、手術ではそれらをすべて取り去ってしまう(切除)ことが重要となります。
以前は胸やおなかに20-30cmほどの大きな創を開けて(開胸、開腹)、がん部を切除する、体に大きな負担のかかる手術でした。大きなダメージを少しでも軽減するために、現在当院で標準的に行っているのが、胸腔鏡・腹腔鏡やロボット支援下での食道がん手術です。
この手術は体の創を最小限にして手術の負担、術後の痛みを軽減することができます。さらに、大きく映し出された鮮明な映像(4K、3Dカメラ)を元に手術を行うため、より精緻な手術が可能になります。
胸部食道がんの創
・右の胸~脇腹にかけて、5mm~10mm程度の創を6つあけて、胸の中にある食道とリンパ節を切除します。
・上腹部に6cm、その周りに5mm~10mm程度の創を5つあけて、おなかの中にあるがんを切除し、胸の中で切除した食道とともに取り除きます。
・左右の頸部のリンパ節も同時に切除する場合には、頸部にU字の切開を、切除は不要な場合には左頸部に5cmほどの切開をいれ、リンパ節を切除します。
胸部食道がんの手術
食道が切除されると、食事の通り道がなくなってしまいます。そこで胃を細長く形成して、胃を管状(胃管)にします。胃管を頸部まで挙上して、残っている食道とつなぎなおし(再建)します。
3-2.頸部食道がんに対する手術
頸部食道がんのリンパ節転移は頸部の周囲に限局していることが多いので、手術で取る範囲は頸部にとどまりますが、頸部食道は咽頭や喉頭と連続しているため、がんの拡がりによっては喉頭を一緒に取らないといけない(声を失う)ことがあります。
手術のお話の前に頸部のしくみを少しだけ紹介します。図に示すように、口から入る食物は、のど(咽頭)を通って、食道に送り込まれます。一方、空気(息)も咽頭を流れていきますが、喉頭から気管に送り込まれます。食物と息の交通整理をしているのが喉頭になります。
頸部食道に限局している場合
図に示すように、食道のみを切除するだけでがんを取り除ける場合は喉頭を残すことができます。
がんが咽頭や喉頭に及んでいる場合
咽頭や喉頭にがんが広がっている場合は、喉頭を同時に切除しなくてはいけません。その時は息の通り道(気管)を切断してのどから体外に出すことになり、声が出せなくなります。
当院では、咽頭に癌が及んでいる場合や気管にもがんが浸潤しているような場合にも、喉頭を温存する術式を開発しております。 すべての場合に温存することはできませんが、喉頭の温存を希望される場合には、一度当科にご相談ください。
3-3.ロボット支援食道がん手術
・当院では胸部食道癌に対するロボット支援下食道がん手術を行っています。
現在、当院ではdaVinciとHinotoriの2種類のロボットが稼働しており、いずれのロボットでも食道がん手術を受けることが可能です。また、当院ではロボット支援手術における認定指導医が手術を行っており安全で低侵襲な手術を実践しています。