IMRT(強度変調放射線治療)について
附属病院では2015年7月より放射線治療科においてIMRT(強度変調放射線治療)を導入しています。
これにより、従来の放射線治療では不可能だった高度ながん治療が実現可能となりました。
IMRT(強度変調放射線治療)について
IMRTは専門のコンピュータを用いることにより、「強度変調」の名の通り放射線を当てる位置と強さを変えることでがんの形にあわせた放射線治療を行う、新しい照射方法です。
例えば前立腺癌では前立腺のすぐ後ろに直腸があり、放射線が直腸に多量にあたると出血するため、直腸を避けて照射する必要があります。このような場合、左図の従来の方法では一定方向から均一の放射線が照射されるため、直腸にも放射線が当たってしまい、がんへの十分な照射が困難でした。対して右図のIMRTでは照射出口に並ぶ鉛のスリットをコンピュータ制御で動かすことで、直腸にできるだけ当たらないように放射線の照射範囲を調節。さらに立体的に様々な方向から照射することにより線量に強弱ができ、直腸には極力放射線を当てずにがん細胞だけに十分な放射線を当てることや、手術では治療が困難な部分への照射が可能になりました。
また、がん細胞周囲の正常組織への照射を減らし、放射線をがんに集中することで、副作用を増加させることなく、手術と同等の治療成績を上げることが可能になりました。
治療は1回15~30分程度で、入院することなく通院で治療を受けていただけます。
附属病院では前立腺がんだけでなく頭頸部がん、脳腫瘍、婦人科がん、膵がんなど全身のがんに応用しています。
IMRT(強度変調放射線治療)の流れ
①診察
医師が患者さんの状態・希望を確認し、IMRTに適応するか検討を行います。
IMRTでの治療が決まれば治療計画を立てます。
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②金属マーカ留置
呼吸や心拍、消化管の動きなどによって移動する腫瘍の場合、金属マーカーを留置することがあります。あらかじめマーカーを腫瘍付近に留置しておくことによって、それらの動きや腫瘍の形態の変化を検知することができるようになり、放射線を正確に腫瘍に当てることができます。
マーカーには微小の金属を用います。留置にかかる時間は30分~1時間程度で治療後にマーカーを取り出すことはできませんが、マーカーは非常に小さく留置の後も検査などを問題なく受ける事ができます。
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③治療計画用CT撮影
放射線治療を行うためには実際の病変部分と正常組織の位置を正確に把握する必要があります。そのために治療計画用CT撮影を行います。
撮影時はできるだけ体が動かないように固定具を作成し装着していただきます。撮影にかかる時間は30分程度です。治療計画用CT撮影時の体位で放射線治療を行います。
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④治療計画
撮影したCT画像を元にシミュレーションを行い、患者さん個々人にあった治療計画を作成いたします。治療計画は医師、医学物理士が専用のコンピュータを用いて作成します。
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⑤事前検証
IMRTは複雑な治療方法であるため、事前に模擬的に照射を行い、治療計画時の計算値と誤差がないか検証を行います。
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⑥CBCT撮影・位置調整
治療計画用CTに位置を近づけるためIMRTに搭載されているCT(CBCT)を撮影し、治療計画用CTと照合することで体位の調整を行います。
CBCT(Cone Beam CT)ではレントゲン写真では見えにくい軟組織(脂肪組織、血管など)が詳細に確認でき、病変部分へのミリ単位での位置調整が可能です。
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⑦治療開始
位置調整完了後、IMRTを行います。患者さんによってことなりますが、治療時間は15~30分程度で痛みはありません。
治療期間は通常6〜8週間ですが、前立腺がんにおいて短期照射(4週間)超短期照射(1週間)を選択いただけるようになりました。
前立腺がんの放射線治療(短期照射・超短期照射)について
前立腺がんに対する放射線治療について、当院では従来の放射線治療に加え、下記のように短期間での治療が可能な方法を選択いただけます。
前立腺がん
照射方法 | 放射線治療 | 照射線量 | 照射回数 | 治療期間 | 保険点数 | |
---|---|---|---|---|---|---|
従来の 方法 |
通常照射 | IMRT | 74Gy | 37回 | 8週間 | 3,000点× 37回 |
2018年4月~選択が可能となった方法 | 短期照射 | IMRT | 60Gy | 20回 | 4週間 | 4,400点× 20回 |
2020年1月~選択が可能となった方法 | 超短期照射 | IMRT | 36.25Gy | 5回 | 1週間 | 63,000点 |
組織内照射 (HDR) |
27Gy | 2回 | 2日 | 23,000点 |
→組織内照射についてはこちら
選択が可能となった治療方法は、従来の方法と比較して副作用を増やすことなく同等の効果を得ることができます。
病状によっては従来の方法が適している場合もありますので、治療方法については診察時にご相談のうえ決定させていただきます。
超高リスク 前立腺がんの治療戦略について
超高リスク前立腺がん(GS:5+5)に対して骨盤照射併用IMRTとHDR組織内照射ブーストの併用療法を2021年1月より開始します。
治療方法 | 照射線量 | 照射回数 | 治療期間 | 保険点数 | |
---|---|---|---|---|---|
超高リスク前立腺がんに対する併用照射 | IMRT + 組織内照射 (HDR) |
60Gy | 30回 | 6週間 | 3,000点× 30回 |
21Gy | 3回 | 2日 | 23,000点 |
乳がんの術後放射線治療について
乳がんに対する放射線治療について、当院では2018年4月より従来の放射線治療に加え、下記のように短期間での治療が可能な方法を選択いただけます。
治療方法 | 照射線量 | 照射回数 | 治療期間 | 保険点数 | |
---|---|---|---|---|---|
従来の方法 | 術後照射 (通常照射) |
50Gy | 25回 | 5週間 | 患者さんに より異なる |
選択が可能 となった方法 |
術後照射 (短期照射) |
42.5Gy | 16回 | 3.5週間 |
選択が可能となった治療方法は保険診療での治療が可能で、従来の方法と比較して副作用を増やすことなく同等の効果を得ることができます。
病状によっては従来の方法が適している場合もありますので、治療方法については診察時にご相談のうえ決定させていただきます。