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無心体双胎に対するラジオ波焼灼術について

附属病院産婦人科では2021年5月1日に無心体双胎焼灼術の施設基準を取得し、無心体双胎に対するラジオ波焼灼術を開始しました。この手術は保険適用で行われます。

無心体双胎とは

無心体(むしんたい)双胎とは、一卵性の双子(ふたご)の妊娠のみに起こるきわめてまれな疾患です。無心体双胎は一卵性の双子のうちの約1%で、全妊娠の1/35000といわれています。一卵性の双子では1つの胎盤を共有しているため、胎盤を通してお互いの血液が行きかう可能性があります。その可能性は約10%です。
妊娠中に心臓が初めからない無心体は、人としての機能を有さず、出生しても生育しません。(心臓があっても痕跡的な大きさで機能が非常に乏しい場合も同様です。)したがって、無心体双胎で妊娠を継続する場合には、健常な胎児を救命することに全力を尽くすことになります。
この場合無心体双胎において健常な胎児から無心体への血流が存在すると、健常な胎児は自身と無心体の両方に多量の血液を供給しなければならず、心臓へ負荷がかかり高拍出性心不全などを引き起こす可能性が高くなります。
これを避けるためには心臓の負荷の原因である健常な胎児から無心体への血流を遮断する必要があり、ラジオ波焼灼術が用いられます。

治療方法について

無心体双胎に対するラジオ波焼灼術は肝臓がんの治療を応用したもので、無心体の骨盤付近にニードルを刺し、ニードルの電極から出力するラジオ波により組織を焼灼します。

1.麻酔後、超音波を用いて健常な胎児と無心体の位置を観察しながら母体皮膚、皮下組織、子宮筋層を穿刺し、子宮腔内にニードルを進め無心体の骨盤付近を穿刺します。

2.血管の血流を確認しながら、ラジオ波を通電し、組織を焼灼します。組織が焼灼される際は抵抗が生じるので抵抗が上昇し、組織の焼灼が確認されるまで通電を行います。場合によってはニードルの位置を変えたり電極の直径サイズを変えて血流が遮断されるまで焼灼を行います。

3.超音波にて健常胎児が生存していること、無心体への血流が完全に遮断されたことを確認してニードルを抜去します。術後血流が再開する可能性もあるため、時間をおいて健常胎児の心拍数や無心体への血流の有無を確認します。

無心体双胎に対するラジオ波焼灼術の対象と適応基準

対象

妊娠15週0日から27週6日までの無心体双胎のうち正常児の臍帯動脈から無心体への逆行性血流がある症例

適応基準

1. 妊娠15週0日から27週6日である
2. 無心体双胎である
3. 正常児の臍帯動脈から無心体への逆行性血流がある
4. 無心体と健常胎児の腹部周囲長の比が1.0以上
5. 母体が手術に耐えられる状態である
6. 本人(母体)の同意が得られている

医療機関の皆様へ

もし無心体双胎妊娠の症例がございましたら、お手数ですが地域医療連携(Tel:072-804-2742)を通して、胎児外来初診予約もしくはOGCSホットラインにご連絡ください。