診療情報舌下免疫療法
花粉症は日本人の多くが悩まされている国民病の1つです。その名の通り、花粉(スギやヒノキなど)によって引き起こされ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎の症状、眼の痒みや流涙などのアレルギー性結膜炎の症状が最も多く見られます。これまでは、この花粉症に対して内服薬(抗アレルギー薬)、点鼻薬、点眼薬などの薬物治療が用いられてきました。
また、鼻腔内の腫れた粘膜をレーザーで照射すると、花粉が粘膜でアレルギーを起こしにくくなり、鼻症状を軽くすることができます。そこで当科では、このレーザー治療を積極的に行なってきました。しかし、薬物治療やレーザー治療は、アレルギーという免疫異常を根本的に治すものではありません。
これに対し、唯一、免疫を治す可能性がある治療法として「減感作療法」があります。古い方法として「皮下注射免疫療法(SCIT)」があり、薄い濃度のスギ花粉エキスの注射を1週間に1回程度行ない、徐々に濃度を上げ、免疫を改善します。ところがこのSCITにはアナフィラキシーという、生命にかかわる重大なアレルギー反応がごく稀ながら起こることがありました。
そこで新しく改良され、保険診療も認可されたのが、平成26年10月から始まったスギの舌下免疫療法(SLIT)です。さらに、平成27年3月からはダニに対する舌下錠も発売になりました。このSLITでは重篤なアナフィラキシー反応はこれまでのところ報告されていません。さらにかつてのSCITでは週に1回の通院が必要であったのに対して、このSLITではスギ、もしくはダニのエキスを舌の下に滴下し、2分間おいた後に飲み込むだけです。最初の1回のみ病院内で行ない、あとは自宅で毎日行うことになります。臨床試験において80%以上の方が何らかの効果を実感できたという結果が報告されており、現在では3年の服用後ののち、少なくとも5年目までは効果が持続することも証明されています。
これまでのアレルギー治療が十分効かなかった方や、抗アレルギー剤に頼りたくない方は、このような舌下免疫療法をなさるのはいかがでしょうか。興味がある方は一度受診ください。