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中央診療施設部光免疫療法センター

概要

患者のみなさんへ

日本人の死因の第1位は、残念なことに頭頸部がんを含めた悪性新生物であり、年々増加傾向にあります。がんにかかったが治療で治った患者さんを含めれば 一生のうちがんにかかる率はもっと高いことになります。

光免疫療法は以前から行われていました。私どもが今回始めるのは、米国NIHの小林久隆先生が開発され楽天メディカル社が後押しして発展してきた光免疫療法の「頭頸部アルミノックス治療」という方法で、国から認可された保険適応のある治療法です。ただし、まだ誕生して日の浅い治療法ですので、本学では上述の小林先生をお迎えして2022年4月から、「光免疫医学研究所」を設置します。すなわち、耳鼻科主体の光免疫療法センターで患者さんの治療にあたると同時に、この研究所ではさらなる治療効果の向上を推進する研究を行います。

増加するがんを抑制し、さらに、がんを治すことが私どもの使命です。現在のところ本治療法は、先行する各種治療で効果のなかった、また、遠隔転移のない頭頸部がん(舌がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、鼻副鼻腔がんなど)に限り行われますが、将来は「頭頸部がん」や「転移なし」、「先行治療歴あり」に限らない色々ながんにも適応を広げていければと考えています。

特色・強み

光免疫療法は、手術療法・化学療法・放射線療法・免疫療法に続く“第5のがん治療法”として注目を集める治療法で、がん細胞だけに吸着する薬剤を投与した後、正常なヒト組織にはほぼ害を与えない近赤外光を照射することでがん細胞を破壊する画期的な治療法です。手術などの方法では治療できない難治性再発頭頸部がんが保険適用となっていて、頭頸部アルミノックス治療とも呼ばれています。

診療の流れ

まず当センターの外来を受診していただき、光免疫療法の適用が可能かどうかを診察します。

■対象とならない可能性のある方
・アキャルックス®に含まれる成分に対してアレルギー反応があらわれたことがある方
・がんが頸動脈(首の左右にある太い血管)まで広がっている方

■入院1日目
治療初日に2時間以上かけて光免疫療法用の薬剤(商品名:アキャルックス®)を点滴投与します。

■入院2日目
薬剤の投与20~28時間後(2日目)にレーザー光を照射します。1か所につきレーザー光を5分程度照射し、2日目は全体で2時間程度あれば終了します。

■入院3日目以降
治療回数は治療効果に応じて1~4回です。治療効果が不十分な場合は、4週間以上の間隔を空けて、最大4回まで治療することができます。

※詳しい治療スケジュールや治療後の副作用については、楽天メディカル社のWebサイトもご覧ください。

主な対象疾患

  • 頭頸部がん

各種実績

診療実績(2022年度版)
セカンドオピニオンを含む外来診療患者数 26 件
手術件数 4 件

トピックス

よくあるご質問

光免疫療法を受けられるがんはなんですか?
現在のところ「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌」が対象となっております。

光免疫療法の費用はどのくらいでしょうか?
保険適用の場合、高額療養費制度を使うことで、ひと月の患者さんの負担額は10万円程度と見込まれます。
(入院期間や個々人の限度額等により差があります。)

どうすれば治療を受けられますか?
まずは担当医の先生とご相談ください。本治療の保険適用となる症例は限られておりますので、条件を満たさない場合は治療を受けることはできません。

他の治療(抗がん剤、放射線など)と並行して受けられますか?
今のところ抗がん剤および放射線療法で効果のなかった方が対象ですので、並行して行うことは想定されておりません。将来的には単独での治療が行われる可能性はありますが、併用することは治療の性質上将来的にもないと思います。担当医とご相談の上、治療方針をお決めください。

保険外診療で光免疫療法は受けられますか?
当院では保険外診療で光免疫療法を受けることはできません。

どうやってがん細胞を攻撃するのですか?
がん細胞の表面に多く出ている目印(抗原)にくっつくタンパク質(抗体)に、光に反応する物質をつけたものが光免疫療法用の薬です。この薬を点滴投与すると徐々にがんに集まっていき、1日くらいでがん細胞に薬がたくさんくっつきます。そこにレーザー光を当てると薬が反応し、薬がたくさんくっついたがん細胞は破裂して死滅します。

なぜ他の細胞には影響がないのですか?
まず光免疫療法用の薬自体は細胞にダメージを与えませんし、また使用するレーザー光も人体に害は及ぼしません。がんにくっついた薬にレーザー光が当たって初めて細胞にダメージを与えることができます。光免疫療法用の薬は、正常細胞にはほとんど出ていない目印(抗原)にくっつく抗体をもとに作っているので、がん細胞にはたくさんくっつきますが光を当てる範囲の正常細胞にはほとんどくっつきません。従って、薬を投与後にレーザー光を当てることで、薬がたくさんくっついたがん細胞は死滅しますが、がん組織内や周囲の正常細胞はダメージを受けません。

光免疫療法には免疫も関係していると聞いたのですが?
光免疫療法は直接細胞を殺傷する作用だけでなく、患者さん自身のがんに対する免疫を活性化することでもがん細胞を攻撃します。光免疫療法によりがん細胞を破壊すると、がん細胞の中からがんに特有の物質(がん抗原)が周囲にばら撒かれます。一方、がん細胞の近くにいる免疫細胞はダメージを受けていないので、周りの免疫細胞が出てきたがん抗原を取込み、壊れたがん細胞と同じ細胞に対する免疫が活性化されます。このがん細胞に対する免疫の活性化により、患者さん自身の免疫システムが、がん抗原を持っているがん細胞に対して攻撃を始め、光免疫療法では生き残ってしまったがん細胞もさらに攻撃することができます。

また光免疫療法は、がん細胞を直接攻撃するだけでなく、がん細胞を守っている免疫抑制細胞を攻撃することで、患者さん自身の免疫を増強して治療効果を得るという治療も可能です。人体には免疫が過剰に働かないように、免疫を抑制するための免疫細胞(Treg細胞)が備わっていますが、がん細胞はこのTreg細胞を利用して、免疫細胞の攻撃から逃れています。このがんに利用されているTreg細胞を光免疫療法により一気に激減させることで、免疫細胞はがん細胞を敵として認識できるようになり、免疫細胞による攻撃が始まります。

以上のような2つのいずれかの方法により、がん細胞に対する免疫を獲得あるいは増強することができると、感染症に対するワクチンの場合と同様に、同じがんが再発しないように予防する効果が期待できます。この効果は動物実験ではすでに実証されており、今後、臨床研究が進められる予定です。


詳しくは…
楽天メディカル社のWebサイトでご確認ください。