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関西医科大学附属病院の特長がんゲノム医療

【当院のゲノム医療について】

2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険収載され、当院でも2020年2月より開始いたしました。
当院のゲノム医療は、がんセンターゲノム医療部門を中心に、臨床検査医学センターや臨床遺伝センターと相互に連携しながらがん遺伝子パネル検査を実施しております。
がん遺伝子パネル検査の依頼があれば、検査を行う前に、がんセンター長、がんセンターゲノム医療部門長、がんセンター専従医、病理医等でキャンサーボードを開催し、がん遺伝子パネル検査の適否を相談しております。

ごあいさつ

がんは遺伝子の変異・変化によって引き起こされる病気と考えられています。変異・変化することでがんの発生や増殖に関連する遺伝子は数百に及び、近年はそれらの変異・変化を狙い撃ちしてピンポイントで治療する薬の開発が進められています。
今までのがん治療は、最初にがんが発生した臓器の治療をどのような患者さんにも同じように行っていました。しかし、がんの発生には色々な要因があり、患者さんそれぞれにがんの発生や増殖が異なることがわかってきました。そのため、遺伝子の特性に合う、個々の患者さんに合った個別的なオーダーメイドの治療が可能になりました。これを「ゲノム(遺伝子)医療」と言います。具体的には、患者さんのがん組織を調べ、がんの原因となる遺伝子の変異・変化を特定し、それに適合する薬剤を検討し、必要であれば治験や臨床研究への参加をおすすめします。一方で原因となる遺伝子の変異・変化の存在が確認できなかったり、存在したとしても対応する薬剤がない等の理由から治療に結びつかないこともありうることをご留意ください。
2019年6月に「ゲノム医療」が保険承認されました。当院においても現在までに数多くの患者さんが自身のゲノム検査を受け、自身のがん細胞の原因遺伝子の変異・変化と特定し、それに対する治療を受けています。当院は「ゲノム医療」を実践する施設として認可されており、この「ゲノム医療」を通して、さらによりよいがん診療・がん治療を地域の方にお届けするのが使命であるとかんがえております。
主治医の先生と相談の上、当院にご来院いただきたいと思います。

がんセンター長 倉田 宝保 教授

がんゲノムパネル検査の普及に伴い、がん治療がそれぞれの患者さんのがん発症に関わる遺伝子情報の違いに応じて、選択できる時代となりました(個別化医療:personalized medicine、緻密化医療 precision medicine)。
このような流れにあって、がんゲノムパネル検査の結果をどのように患者さんに説明し、還元していくかが大きな課題となっています。
特に問題になるのが、一部の患者さんにおいて次世代に伝受されうるがんのリスクが見つかる(家族性)場合の対応です。
当院がんセンターのがんゲノム医療部門では、遺伝診療の専門チーム(臨床遺伝専門医、遺伝カウンセラーで構成)が、がん治療専門医と協力して、家族性がんの患者さんに最善の予防や治療に関する相談と情報提供を行っています。「がん遺伝子パネル検査の結果で遺伝しないか心配」「家族にがんの人がいて発症リスクはあるのか不安?」などでお悩みの方は、主治医と相談の上、遺伝カウンセリングを受けられることをお勧めしています。
データの解釈、発症リスクの予測、遺伝検査、予防検診の受け方などについて個々の患者さんの状態に応じた情報提供をさせていただいております。
スタッフ一同、皆様のご健康管理のお役に立てることを願っております。

がんセンター がんゲノム医療部門長 塚口 裕康 病院准教授

がんゲノム医療とは

「がんゲノム医療」とは、「がん」の遺伝子を詳しく調べ、一人一人の遺伝子の変化に応じた治療などを行う医療です。
具体的には、患者さんのがん組織に生じている遺伝子の変化を網羅的に調べ、その結果を利用して適切な治療法を選択します。これまでのがん種ごとの治療法選択に加え、遺伝子の変化に基づいた臓器横断的な治療法を検討します。また、生まれつきの体質に関連する遺伝子の情報※も合わせて調べており、ご本人・ご家族の健康管理について検討する場合があります。

※生殖細胞系列の遺伝情報

関西医科大学附属病院 がんゲノム医療連携病院に指定

第3期がん対策推進基本計画においてがんゲノム医療の推進が掲げられ、厚生労働省は全国の11施設をがんゲノム医療中核病院に指定し、さらに中核病院と連携するがんゲノム医療連携病院を指定しました。

関西医科大学附属病院は2018年4月にがんゲノム医療連携病院の指定を受けております。

がんゲノムプロファイリング検査とは

がんゲノムプロファイリング検査とは、「がん遺伝子パネル検査」とも言われ、患者さんのがん組織や血液からがんの発症に関連する遺伝子「がん関連遺伝子」を抽出して、どの遺伝子にどのような変異があるかを網羅的に解析します。
「がん遺伝子パネル検査」は複数のがん関連遺伝子の変異を同時に解析できるため、患者さんそれぞれのがんの遺伝的背景を詳しく知ることができ、患者さん一人ひとりにあった治療につながることが期待されています。

この検査を受けることで、下記の治療法が見つかる可能性があります。
・国内であなたの病気に対して承認済の薬剤
・国内で他の病気に対して承認済の薬剤
・国内で承認されていない薬剤
・国内でも海外でも未承認で、現在開発中の薬剤
など

当院で行っているがん遺伝子パネル検査について

①【OncoGuide TM NCCオンコパネルシステム】

この検査を受けるためには手術などにより採取された腫瘍細胞と、正常細胞※を得るために採血検査が必要です。腫瘍細胞と正常細胞の遺伝子の配列を同時に比較することで、腫瘍細胞に起きた遺伝子異常のみを検出することができます。解析対象の遺伝子数は124遺伝子です。

※生殖細胞系列の遺伝情報

②【FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル】

この検査は、手術などで採取された腫瘍細胞のみで検査が行われます。腫瘍細胞のみで調べるため、腫瘍細胞の遺伝子の配列情報と正常細胞の遺伝子の配列情報が混在しています。解析対象の遺伝子数は324遺伝子です。

③【FoundationOne Liquid CDxがんゲノムプロファイル】

この検査は、血中に流出してくる腫瘍細胞由来の遺伝子を解析するので、手術検体などの採取は必要ありません。過去の手術検体を用いる場合と比べて、現在の腫瘍の遺伝子変異の状態を反映した結果が得られる可能性がある一方で、手術検体よりも腫瘍細胞の遺伝子変異の検出感度が劣る欠点があります。遺伝子の変異には腫瘍細胞と正常細胞の情報が混在しています。解析対象の遺伝子数は324遺伝子です。

※当院では自費診療でのがん遺伝子パネル検査は実施しておりません。

【エキスパートパネルについて】

がん遺伝子パネル検査の結果については、専門家などで構成された会議によって、効果の期待できる薬があるかどうかなどが検討されます。この会議を「エキスパートパネル」と呼びます。
当院のエキスパートパネルの構成メンバーは、担当医や病理医の他、薬物療法の専門医や遺伝医学の専門医、遺伝カウンセリングの専門家などさまざまな分野の専門家によって構成されております。

がん遺伝子パネル検査の対象患者さんと検査の留意点

がん遺伝子パネル検査(保険診療)対象患者さんは下記の通りです。

1. 下記いずれかの診断を受けた方
標準治療で効果がなく、次の治療をさがしている固形がんの方
原発不明がん(がんの発生臓器がはっきりせず、転移巣だけで大きくなったがん)の方
標準的な治療が確立されていない希少がん(患者数が少なく稀ながん)の方

2. 全身状態、臓器の機能などから、本検査実施後に検査結果をもとに化学療法が実施できると主治医が判断した方

がん遺伝子パネル検査における留意点

がん遺伝子パネル検査を実施する上で、下記のような点にご留意いただく必要があります。

・遺伝子変異が見つかっても、効果が期待できる有効な薬剤がない場合もあります。
・国内では未承認などの理由により、実際に治療を受けることが難しい場合もあります。
・がん遺伝子パネル検査の結果に基づき、何らかの治療が行われた患者さんは全体のおよそ10%程度です。
・患者さんの体調から治療ができないこともありますので、がん遺伝子パネル検査を希望される場合は、早い段階から主治医にご相談されることをお勧めします。