当院の手術体制 〜安心できる手術の提供を目指して〜

手術部は手術を行う外科系医師のほかに、麻酔科医常勤18名、手術部看護師常勤33名、臨床工学技士、看護補助者などの職種が配属され、手術室も11室を有し、他部門と比較しても、大きな規模を誇る所帯です。特徴としては、中央側に手術室が配置され、周りを物品の回収廊下が囲む構造で、物品の流れは交差しない一方通行になっています。また、2室はクリーンルームとして、フィルターを通した空気が常に入れ替わる設計にするなど、手術施行において、感染管理や、合併症の予防が図られています。
 
その他にも安全な手術、麻酔を行うための多くの工夫がなされています。全身麻酔および麻酔科管理で行う局所麻酔症例は、全例事前に麻酔科が計3段階にわたって危険性を評価します。1つめは、麻酔科医によるカルテ診察です。事前にリスクを評価、足りない検査などを追加します。2つめは、麻酔科専門医、手術部看護師による術前外来です。患者さんの状態をきちんと把握・評価したうえで、麻酔について説明させていただいています。外来診察の結果、患者さんのご希望を踏まえ、全身状態の評価とその対策、麻酔の適応の検討、及び管理法の立案がおこなわれます。3つめは、原則前日に実際の担当医・看護師が病床訪問をします。全例事前に麻酔科において術前検討会を行い、複数の麻酔科医によって麻酔管理法について検討がおこなわれます。手術後も麻酔科管理症例は全例、翌日以降に麻酔科医、手術室看護師で術後訪問を行っています。重症、大きな侵襲のかかる手術は術後、GICU(術後集中治療室)で管理を行います。
 
医療事故防止のため、WHO手術安全チェックリストを活用し、スタッフが、患者・手術法・麻酔法を繰り返し確認をしています。また、カルテ、モニターは電子化されており、麻酔科の監視室ではすべての手術室のモニター項目が確認できます。カルテは、安全確認項目を記入しないと次の段階に進めないなどの対策が取られています。安全な手術の提供と患者さんの負担の軽減、患者さん・ご家族の心配、不安の軽減を心がけています。

麻酔科医師

手術における全身麻酔や部分麻酔など麻酔全般を担当します。安全な手術遂行のため麻酔中は時々刻々と変化する患者さんの状態を監視し、状態に応じた薬の投与をはじめとする対処を行います。
また、術前クリニックを開設し、外来段階で手術・麻酔に関する患者さんへの説明を行い、より安心して手術を受けられるよう努めます。

看護師

手術が効率的かつ安全に遂行できるように、全体のマネジメントを医師と共同で行います。
手術前日には担当看護師による術前訪問にて手術室に入った時から病棟に帰るまでの流れを説明します。
手術は基本的に2名(器械出し・外回り)で運営し、手術予定時間を延長した際には病棟と連携してご家族に連絡し、不安解消に努めます。
術後には病棟を訪問し、術後の経過観察を行います。麻酔科医師と共に訪問することで患者さんの負担軽減と情報の共有に努めています。

薬剤師

手術部に常駐し、麻薬・毒薬等の管理を行っています。実際に使用した薬品と麻酔記録とを照合し、法律上管理が必要な薬品や、危険な薬品の確認を行うことにより、事故等を未然に防いでいます。

臨床工学技士

麻酔器・生体情報モニター・電気メスなどを含む手術機器の保守点検や、内視鏡のセッティング、その他医療機器のトラブル対応、滅菌業務支援に従事します。医療技術が高度化する中で手術支援ロボット(DaVinci)操作支援など高度医療機器の保守管理も行っています。

看護助手

看護師の指示のもとに、手術で使用した後の部屋の清掃や検体の搬送等を行います。また、手術に必要なシーツやタオルなどの材料の準備を効率的に行う他、看護師と協力して患者さんの受け入れを行っています。

事務職員

手術や術前外来を受けられる患者さんの受付や会計業務を行います。

部長ごあいさつ

手術は患者さんの体をメスで切るのですから、麻酔の無い状態では体は痛みを感じ一瞬たりともじっとしておられません。強い刺激や大量の出血で、ショックのため命を落とすこともあるでしょう。当院には手術室11室があり、全身麻酔手術は麻酔科医が担当します。麻酔科医は患者さんを入眠させた後、脳の活動や心臓や肺の動きをコントロールすることで侵襲から患者さんを守り、患者さんが動かない状態を作ることで手術が行いやすい環境を整えます。麻酔薬は大変進歩しており安全性も格段に向上しました。最近では100歳を超える患者さんの手術も稀ではありません。
 
麻酔科医にとって大事なことは事前に患者さんの状態を把握し最適な麻酔法を選択することです。患者さん一人一人と術前にお話をすることが重要であり、かなりの合併症を防ぐことができます。
 
私どもはすべての全身麻酔を受ける患者さんに対し術前外来を受診していただき最善の麻酔法を選択しています。

手術部 部長
(麻酔科部長・教授)

増澤 宗洋先生

フロア&設備紹介

当院手術部の特徴

手術支援ロボット ダヴィンチXiの導入

現在、多くの手術において腹腔鏡を用いた手術は標準術式として、各診療科において用いられております。腹腔鏡手術は2016年に関西医科大学総合医療センター開院後も各診療科にて施行され、患者さんに対する低侵襲化に寄与してきました。
 
2022年8月に更なる低侵襲手術が期待できる手術支援機器である、ダヴィンチ・システム(Intuitive Surgical社製 da Vinci Surgical System Xi)を導入いたしました。今回導入したダヴィンチXiは第4世代であり、現行の中で最新の機種となります。
ダヴィンチ導入に伴い、当院におきましてもロボット支援手術センターを立ち上げ、各科において患者さんに低侵襲の手術を提供できるようにしていきたいと考えております。
 
その他、手術部においては腹腔鏡下手術を目的とした専用室を2室(鏡視下手術対応室6 室)、人工関節等手術を扱うクリーンルームを2室、眼科手術専用室を1室と回復室を保有し、集中治療室が隣接している環境にあります。今後も最新の麻酔機器が導入予定であり、日々、皆さまに安心・安全な手術を提供するため看護部、放射線部、輸血部、薬剤部など多数の部門と連携して安全管理に努めています。

手術部DATE

コロナ前の2019年の手術総数は8,095件でしたが、コロナ禍となり患者の受け入れを開始した2020年の手術件数は6,696件、2021年は6,512件と前年比約80~82%程度減少しています。コロナ禍が続いている中、以前と同様の手術件数を確保することは難しいですが、コロナ陽性患者さんの手術も行っており、より多くの患者さんが元気になっていただけるよう、手術部チームは一丸となってたゆまぬ努力を続けています。

手術支援ロボットを導入

手術支援ロボット ダヴィンチXiを導入しました。

はじめに、手術支援ロボットダヴィンチは, 1980年代アメリカで開発が進められ1999年に完成され、2000年より手術支援の装置として利用が始まりました。人間の手の動きを正確に再現する装置で内視鏡手術を補助する装置です。決して“鉄腕アトム”のような自立型ロボットではなく(将来的には人工知能と融合したロボットが完成されるかもしれません。)、“鉄人28号”型(Leader-Follower型)の遠隔操作が必要なロボットです。
 
日本では腹腔鏡手術は外科分野に1990年代より導入され、多くの種類の手術がなされ、有用性が確認されています。腹腔鏡手術は開腹手術と比較すると、合併症のリスクが低い特徴があります。 傷が小さい(操作用の穴5-15mm)ことから術後傷口の細菌感染を起こすことは少なく、術後は早くに体を動かせることから血栓(いわゆるエコノミー症候群)ができにくいとも言われています。また、体の内部が空気に触れないことで腸閉塞を起こす頻度も抑えられます。腹腔鏡手術は「傷口が小さい」「出血量が少ない」「手術後の痛みを軽減」「回復が早く短い入院期間」といったメリットがあります。腹腔鏡手術の向上を目的として手術支援ロボットが開発されてきました。
 
ロボット支援内視鏡手術では従来の腹腔鏡手術と同様、体に小さい穴をあけ、おなかの中に立体視が可能なカメラを挿入してモニターに映し出される拡大された映像を見ながら手術を行います。長さのある鉗子(ピンセット)やはさみ、止血を行いながら切開が行える超音波凝固切開装置、腸管の縫合を行う自動縫合器(ホッチキス)などのロボットの腕(ロボットアーム)についた腹腔鏡手術用の機器を使用し手術をします。また、ロボットアームは従来の鉗子とは比較にならない可動域をもち、人の手の関節以上に可動性があります(自由度8軸)。また、ロボットアームを通しての鉗子操作は手振れする事ない切開、剥離、縫合の繊細な操作・確実で安全な操作が行うことが出来るようになりました。
 
この度8月20日に当院に手術支援ロボット第4世代ダヴィンチXi が導入されました。当院では初めての手術支援ロボットの導入であり、医師(術者、助手、麻酔科医師)、看護師、臨床工学士、医事課事務と綿密に連携し、安全確保と円滑な手術支援ロボットの活用を目指してトレーニングを行い、ロボット導入後、第1例目は前立腺がんの手術を9月末から開始し、10月には直腸がんの手術が開始されました。今後の予定でありますが、順次呼吸器外科、婦人科他へ広げていく予定です。患者さんには、これまで以上に安全に完成度の高い手術を提供できることを確信しております。

内視鏡下支援ロボット手術

腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術 / 腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術 / 腹腔鏡下尿管悪性腫瘍手術 / 腹腔鏡下腎盂形成術(2023年1月) / 腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術 / 腹腔鏡下仙骨腟固定術 / 腹腔鏡下直腸切除・切断術 / 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 / 胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術 / 胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術 / 胸腔鏡下良性縦隔腫瘍手術 / 胸腔鏡下良性縦隔腫瘍手術 / 胸腔鏡下拡大胸腺摘出術 / 腹腔鏡下膣式子宮全摘術
※当院にて実施可能な手術 ※導入予定

ロボット支援手術センター長ご挨拶

関西医大総合医療センターでは、ロボット支援手術検討委員会を設置し、ロボット手術に関わるスタッフ(医師、看護師、臨床工学士)の初期トレーニングや習熟度を判断し、技術の維持に努め、各分野の学会(日本内視鏡外科学会、日本泌尿器内視鏡ロボティックス学会、日本呼吸器外科、日本産婦人科学会など)の指針に準拠しているかを確認し、当院での手術が可能かを判断し、ロボット支援手術の技術と安全性の向上に努めています。
 
ロボット支援手術が多くの術式に広がり、新しい技術を一早く安全に提供できる体制を維持していきたいと考えています。  

センター長
(腎泌尿器外科
部長・准教授)

室田 卓之先生

手術が決まってから退院までの流れ

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