病名 | 腹部大動脈瘤(ふくぶだいどうみゃくりゅう) |
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部位 | 腹部(大動脈) |
主な症状 | 基本的に無症状 (腹部に拍動する腫瘤を触れることもある)、破裂すると腹部の激痛や腰痛 |
腹部大動脈瘤がある人は、おなかに拍動性腫瘤を触れることがありますが、動脈瘤が小さかったり、肥満でおなかの脂肪が厚い人では触れないことが多いです。動脈瘤は体の深部や腰に鈍痛を感じることがありますが、破裂するまで無症状のことが多いので、発見することが最も大事です。へその周囲のおなかの奥を自分で触ってみましょう。腹部大動脈瘤が破裂すると、激烈な腹痛や腰痛とともに、大出血により血圧が下がり、ショック状態に陥り死亡に至ります。
大動脈は加齢とともに動脈硬化性病変が起こります。動脈壁にコレステロールやカルシウムの沈着が起こり、血管内腔や壁そのものが粥状硬化になり、弱くなります。 大動脈は多量の血液が高い圧力で流れています。しかも直径の大きい血管ですので、血管壁にかかる力も細い血管よりもはるかに強力です。このような大動脈の壁に弱いところができると、その部分が次第に瘤状に膨らんで動脈瘤になります。
簡単な腹部超音波検査で腹部動脈瘤をみつけることができます。 確定診断にはCTや血管造影が有効です。これらにより、動脈瘤の範囲、大きさ、形を診ることで、手術の適応があるかどうか、どこからどこまで人工血管にかえればいいか、周辺の動脈硬化状況などを判断します。
お腹を開いて行う「人工血管置換術」か、血管内治療である「ステントグラフト手術」があります。「人工血管置換術」は、全身麻酔でお腹を30cm程切開して瘤の部分を人工血管で置き換える手術です。治療法としてほぼ確立しており、本邦での死亡率は1〜3%台と安定しています。「ステントグラフト手術」は、鼠径部の大腿動脈を数cm切開して、血管内に管を挿入し、その管の中に折りたたんだステント付きの人工血管を挿入し、レントゲン透視装置下で瘤の位置に固定する術式です。痛みが少なく入院期間が短くてすむのが特徴ですが全例に行えるわけではありません。