病名 | 自己免疫性肝炎(じこめんえきせいかんえん) |
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部位 | 肝臓 |
主な症状 | 全身倦怠感、黄疸 |
自己免疫性肝炎に特徴的な症状はありません。最も多いのは倦怠感で他に関節痛、発熱などがあります。一方、こうした症状を全く示さず、肝機能検査値異常をきっかけに発見される患者さんもあります。病気が進むと肝硬変になり、腹水、黄疸、食道胃静脈瘤の破裂による吐血や下血・肝性脳症などの症状が現れてきます。また他の自己免疫病(関節リウマチ、慢性甲状腺炎など)の症状を伴う場合もあります。
まだ不明ですが、免疫異常特に自己免疫の異常が病気の発病や進行に関わっていると考えられています。自己免疫病とは、体の免疫システムの不均衡によって生じる病気を総称しますが、自分自身の体の成分に対する抗体(自己抗体と呼ばれ、血液中に現れます)や免疫を司るリンパ球と、自己との過剰な反応により引き起こされる病的状態をいいます。つまり、本来自分の身を守るための免疫が、自己免疫性肝炎では肝臓の細胞を攻撃するようになり、結果として肝臓の炎症を起こしているのです。
血液検査で肝機能検査値異常がある場合、他の肝臓の病気がないことを確かめたうえで、自己免疫病関連の血液検査(免疫グロブリン、自己抗体、特に抗核抗体や抗平滑筋抗体)を行います。この抗核抗体は自己免疫性肝炎に特徴的に認められるものではなく他の病気でも陽性になりますので、抗核抗体が陽性となったからといって自己免疫性肝炎とは診断できません。肝臓の組織を採って顕微鏡でその状態を観察する検査、肝生検を行います。肝生検は確実な診断と病気の進み具合や治療効果の確認に大切な検査です。
自己免疫反応を抑えるために免疫抑制剤、特に副腎皮質ステロイドが治療に用いられます。肝機能検査値が正常化しても肝臓の組織内の炎症反応は必ずしも平行して改善するわけではないので、投与は長く続けることが大切です。副腎皮質ステロイドの効果が不十分あるいは副作用のため使用できない患者さんにはアザチオプリン(イムラン)などの免疫抑制剤を使用します。副腎皮質ステロイドには消化性潰瘍、満月様顔貌、糖尿病、骨粗鬆症などの副作用がありますが、病態に応じて予防薬投与を受けることも大切です。副腎皮質ステロイドの自己中止は自己免疫性肝炎の再燃につながり、治療抵抗性になる場合が多いことを理解し、きちんと服用することが大切です。